つきへのぼうけん
昔 昔、雪みたいに まっ白な 子ぎつねが いました。名前は ユキくん。ユキくんは 毎晩、おやすみの前に 夜空を 見上げるのが 大好きでした。
「お月さま、今日も きれいだなあ。いつか 行ってみたいなあ」ユキくんは そう 思いながら、きらきらひかる お月さまを ながめていました。
ある夜、ユキくんが いつものように 夜空を 見上げていると、ふしぎなことが 起こりました。お月さまから、やさしい 光の すじが、まっすぐ ユキくんの ところへ のびてきたのです。
「わあ、なんだろう」ユキくんは おそるおそる、光に 近づいていきました。すると、光は にじ色の 橋に 変わりました。「これは、月への 道かな」
ユキくんは 勇気を 出して、にじ色の 橋を のぼり始めました。一歩、二歩、三歩。歩くたびに、足の下で にじが きらきらと かがやきます。
雲の上を ふわふわと 歩いていくと、だんだん お月さまが 大きくなってきました。「もう少しで、月に つくよ」ユキくんは うれしくなって、もっと 早く 歩きました。
とうとう、お月さまに つきました。月は、ふわふわの 金色の 砂で できていて、歩くと さくさくと 音がしました。
「ようこそ、お月さまへ」ふりかえると、まっ白な うさぎさんが 立っていました。「私は 月の うさぎの ルナ。君のこと、待っていたのよ」
「ぼくを 待っていたの?」ルナは うなずいて、ユキくんの 手を 取りました。「今夜は、星の かけらを 集める 夜なの。一緒に 来てくれる?」
ユキくんは こくりと うなずきました。二人は 月の 上を 歩いて、最初の 場所に つきました。小さな 湖が ありました。
「湖の 底に、青い 星の かけらが あるわ」ユキくんが 湖を のぞきこむと、水は 透明で、底に きらきらと 青くひかる 何かが 見えました。
「手を 入れて、やさしく すくってみて」ユキくんは 水に 手を 入れました。水は 冷たくなくて、ほんのり あたたかかったです。やさしく すくい上げると、手のひらに 青い 星の かけらが 残りました。
「きれい」次に、二人は 高い 丘に 登りました。丘の てっぺんには、金色の 花が たくさん 咲いていました。
「この 花の 真ん中に、金色の 星の かけらが あるの」ユキくんは そっと 花に 近づいて、真ん中を 見ました。金色の 小さな かけらが、ひかっていました。ユキくんが やさしく 手を のばすと、かけらは ふわりと 手のひらに のりました。
「あと 一つよ」ルナは 空を 見上げました。遠くに、ピンク色に かがやく 雲が ありました。「あの 雲の中に、最後の かけらが ねむっているわ」
ふたりは 雲へ 向かって、ふわふわと とびました。雲の 中は、わたあめみたいに やわらかくて、あまい 香りが しました。
雲の 真ん中に、ピンクの 星の かけらが ねていました。ユキくんが そっと 手を のばすと、かけらは 目を さまして、にっこり 笑いました。「見つけてくれて、ありがとう」ピンクの かけらは、ユキくんの 手のひらに ぴょんと とびのりました。
三つの 星の かけらを 持った ユキくんの 手のひらで、かけらたちが くるくると 回り始めました。青と、金色と、ピンクの 光が まざり合って、一つの きれいな ペンダントに なりました。
「これは 夢の ペンダント。持っていると、すてきな 夢が 見られるわ」ルナは ペンダントを ユキくんの 首に かけてくれました。
「そろそろ 帰る 時間ね。また いつでも 遊びに来てね」ルナは ユキくんの おでこに、そっと キスを しました。
ユキくんの 体が、やさしい 光に つつまれました。ふわり、ふわり。雲の上を 通って、にじの 橋を おりて、気がつくと、ユキくんは 自分の ベッドの 上に いました。
むねには、きらきらひかる 夢の ペンダントが ありました。「本当の ぼうけんだったんだ」ユキくんは ペンダントを ぎゅっと にぎって、目を 閉じました。
窓の 外では、お月さまが やさしく ほほえんでいました。おやすみ、ユキくん。おやすみ、みんな。すてきな 夢を 見てね。